先日、この記事で書きましたが、⇒「TV初・この世界の片隅に|海外で評価が高い?調べたら驚きの結果!」「この世界の片隅に」を、日本映画専門チャンネルで視聴しました。
監督の片渕監督のインタビューもありました。
そのインタビューで知った内容と、ネタバレを含む感想を書きたいと思います。
涙をたくさん流してちょっとふらふらの状態です。
まだ見ていない方、ネタバレ嫌だと思う方は、画面を閉じてくださいm(__)m
片渕監督の語っていたこと
- クラウドファンディングのこと
- 天気
- ご飯
- 艦隊
- すず、が生きていれば90歳を超えている
クラウドファンディングのことは、こちらの記事でも書きました⇒「TV初・この世界の片隅に|海外で評価が高い?調べたら驚きの結果!」
天気も忠実に再現したそうです。例えば、空襲があった日は曇りだった。だから、爆撃機が市民には見え辛かったなど。
映画中に出てくる、すずの節約野草料理なども実際に作って食べてみたということでした。
さらに、艦隊も細部までこだわって製作した。
すずは実在の人物ではありませんが、生きていれば、90歳を超えているそうです。元気にわがままな(苦労をたくさんしたので)おばあちゃんでいて欲しいと語られていたのが印象的でした。
秀逸な脚本・様々な伏線
よくできているお話だなと思いました。
絡みあういくつもの伏線の数々・・・
夫・周作との出会い
すずと、夫となる周作の出会いは、物語の冒頭に人さらいの出来事がありました。
「ああ、あの時の子か」という伏線がありました。
すずは覚えていなかったようですが、周作は、すずのことを覚えていて、何年も経って結婚を申し込みに来るくらい周作にとって好きだった、一目ぼれした相手でした。
座敷童とリン
すずが道に迷った際に、遊女リンと出会います。
リンは、貧困の家庭で育った幼い頃に、スイカの赤い実の部分を厚意で食べさせてもらったエピソードを語ります。その時の厚意を働いたのがすずでした。
(原作では、このリンとすずの夫周作の間で、【大人の世界の三角関係】の話もあるようですが、映画はその要素が割愛されていました)
幼馴染・哲の想い
周作と結婚前、すずは、哲の事が好きでした。すずが、哲のことを好きだと思える描写は、いくつもありました。哲は、椿の花をすずの頭に載せた描写がありました。
周作との祝言の日に、椿の花の髪飾りを飾っていたすず。お嫁に行った時も、哲への想いが消せていないのを小道具で描写されていました。
さらに、哲は、志願兵になります。そして、すずの結婚している家に訪ねてくる。
結婚している家に男一人訪ねていきます?さらに、すずの夫、周作が「ここでは寝させられない」と納屋で寝るように言うシーンがありました。そして、すずに、夜中に、納屋に行って、哲の相手をしてこいと、言う周作。
最初、「ここでは寝せられない」というのは、哲への嫌悪感から言っているのかと思いましたが、志願兵として戦地へ向かう哲への配慮だったのだということが分かります。
最愛の妻を差し出すくらいの配慮を、国のために戦う人(志願兵)にしていたという当時の状況が分かりました。現代では考えられないなと思いました。
しかし、すずは、「こういう日を待ち望んでいた気もするけどダメだ」と、哲の気持ちを拒みます。変化したのです。周作との暮らしの中で、愛が育まれました。周作の事を愛しているのが伝わってきました。
こういう一途な想いが、また、すずさんの素敵なところだなと思いました。
子供
周作とすずの間には子供がいません。もしかして、「妊娠したか?」という描写が描かれていましたが、結局、妊娠していませんでした。
後に、不発弾で亡くなってしまう、姪っ子の晴美との関係がとても良いものでした。良好な関係だっただけに、晴美が亡くなった時は、義理の姉にも責められて、すず自身もやり場のない想いにさいなまれます。
すずが、妊娠できない体質なのかは分かりませんが、最後に、身寄りのない戦災孤児を引き取ることにも繋がります。
義理の姉との関係
「ぼーっとしている」すずと、「気の強い」義理の姉の径子の対比。義理の姉が出戻ってきて、すずは、意地悪されても、堪える事なく過ごします。すずの持ち前のパワーを感じました。
しかし、空襲の中、不発弾で、すずといる時に、義理姉の径子の子供、晴美が亡くなってしまいます。径子は、すずに、あたってしまいます。径子のやるせない辛い気持ちも分かります。
晴美が亡くなった時に、すずは、すずで、右手を失ってしまいました。片手が不自由なすずは、助けてもらわないと生活できません。それをきっかけに、徐々にすずと径子の仲が近づくのを感じました。
奪われた大切なもの
戦争で奪われたものは、肉体的には、すずの右手、晴美の命です。この物語の、起承転結で言う、【転】となる所だと思いました。
さらに、心の部分でも大きなものが戦争で奪われました。絵を描くことを奪われてしまいました。すずは、絵を描くことが大好きな女性でした。
空襲の際にすら、すず自らも「こんな時に不謹慎だ」と思いを抱きつつ、「絵の具があったら、絵を描きたい」という思いの描写がありました。すずのライフワーク、生き甲斐こそが【絵を描くこと】だったのです。すずの命と言ってもいいくらい大切にしてきたことです。それが、できなくなってしまいました。戦争で奪われてしまったのです。
手の描写・1
さらに、うまいなと思ったのが、
広島に支援に行くメンバーに入れて欲しいと、右手を失った、すずが、自分の髪を切るところです。左手(片手だけ)で出来ることはたくさんあります。しかし、髪を結ぶことは両手がないとできません。
足手まといにならないように、その場で髪を切ってしまう、すずの強い気持ちが表現されています。
手の描写・2
これは自分では気づきませんでしたが、片渕監督がインタビューを受けていたので、知った事です。
すずが、助けられなかった晴美と繋いでいた手は【右手】、一方、戦災孤児の母親は右手は負傷してなかったので、【左手】で子供と手を繋いでいて爆撃に遭遇してその母親は亡くなりました。
片手がない、すずを見て、お母さんだと勘違いして、孤児は、すずの元に来ます。
すずは、「晴美を引く手が左手ではなく、右手だったら?」という思いにさいなまれていた。
しかし、左手でも右手でも関係なく人は亡くなっているのだという現実を表現していたようです。そのような細かい一度視聴しただけでは、気付かない所までこだわって製作しています。
あの時、ああだったら、こうだったらと言って、人は後悔するものですよね。
最後に
この映画、【この世界の片隅に】は、実話ではないからこそ、リアルを出すため、人の心に伝わるように、たとえば、天気や艦隊のような細部までこだわっています。確かにその時の呉や広島はそんな感じだったのだろうなと、思わせてくれる内容でした。
さらに、実話ではないからこそ、伏線を張り巡らすことで、物語がよりリアルに感じられます。伏線の構図が見事で、ここまで見事な物語の、脚本、構成だからこそ、口コミで広がり、多くの人が心を動かされた作品になったのではないかと思いました。
テーマが幾重にも重なり、人間の業、定め、運命、導かれ、見たいなものが絶妙に絡み合った良作だと感じました。
力強く生き抜いたすずの人生に魅了されました。葛藤しつつも、困難を乗り越え、生活に工夫をし、生き生きとした、人間の日常が描かれていました。
また、主人公の住んでいる所が、「呉」であり、実家が「広島」という設定も、戦争のリアルさが増す設定だったと思います。
原爆が落とされた日も、その場にいた人にとっては、日常の暮らしであったと思いますし、そういう人間の普通の営みが描かれていました。
感動しました。久しぶりにうなるほどの良作を見た気がしました。
日本映画専門チャンネルを視聴するには
◇スカパー!
◇J:COM
◇ケーブルテレビ
◇ひかりTV
◇auひかり
で視聴できます。
日本映画専門チャンネル放送時間
2018年3月18日(日) | 21:00 |
2018年3月21日(水) | 21:00 |
2018年3月25日(日) | 18:10 |
片渕須直監督・過去作も放送
3月21日(水・祝)
午後5時スタート
「アリーテ姫」
「マイマイ新子と千年の魔法」
私は、この過去作2つも、観ることにしますよ。
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